馬→→
まほろば寫眞館館長に就任し、
その経緯やなんかを書くと宣言せしめたが、
そう予定通りにことをすすめるのも芸がない。
では、いきなり違うことを書こうと思ふ。
先日の定休日のこと。
特に予定もなく、
ニャンたちとゴロゴロも良いなと思ったが、トラと一緒に箱の中には入れそうになく、
天気も良いしで、
まほろば写真館のチラシを配りがてらサイクリングへ。
それにしても宇陀の町は面白い。
新旧の建物や暮らしぶりなんかが入り交ざっていて、
「町並み保存」の観点からは、
もっとこう一貫性みたいなのを求める声もあるようだが、
映画のセットじゃあるまいし、私にはこのライブ感がしっくりくる。
自転車の前に突如として現れるこうした景色。
状況がよくのみこめないが、なんとなくドラマが伝わってくる。
そして束の間、私はこれに乗り換えて空を駆けるのである。
ごく近所だけのサイクリングのつもりだったが、
出先で「馬情報」なるものをキャッチして遠出することに。
遠出といっても5キロほどだが。
あ。尼崎から当店に、50キロ超を自転車で行こうかな?
と簡単に言う人がいるのだが、私には宇宙旅行みたいな話である。
◇
ここで一旦話をそらそう。
娘らが時々、「トラにひっかかれた」だの、
「フクちゃんに噛まれた」だのと自慢げに話すのだが、
そのたびに。
昔読んだバードウォッチング系のエッセイに書いてあった、
次のくだりを思い出す。
「フクロウにつつかれた奴が、その傷を得意げに見せるので、
うらやましすぎて、「治れ!」 とその傷に念じた」
当時。その数行を読んだとき思わず噴き出し、
えらく共感したものだが、
なぜ人は他の動物につけられた傷を誇らしげに見せたり、
嫉妬するのだろうか?
ま。いま思いつきで書いてるだけで、
にわかに答えなんか出るはずもないので、
いささか強引だが。再度、話を戻そうと思う。
◇
ということで。5キロサイクリング。
やがて、「ここでいいのだろうか?」
と。なったところで、
その不安感を見透かされたような看板が。
「馬→→」
いきなり結論づけて申し訳ないが、
私は無事に馬さんたちと会えた。
さらには。
彼らの世話をされている笑顔が素敵な女性にも出会え、
馬についての色々な話をきかせて頂き、
とても貴重な時間を過ごせた。
(手前:スぺさん 奥:芝くん)
で。ヘビーな話も伺ったが、
ここでは軽めの土産ばなしを少々。
馬ってほぼ全景(350°)が視界にはいっているらしい。
もちろん正面も。
こんにちわ。
スぺさんも、芝くんもとても温厚で優しい性格。
顔や身体をすりよせてきたりしてきたが、
その体躯の大きさにたじろきつつ、
こんな風に馬と接したことがなかったので感動。
それと。ぜひ最後にこの件について言及したい。
「実は、芝くんは私の手を噛んだ」
もちろん甘噛みで傷なんかはできなかったが、
そんなことをするのは初めてだったそうだ。
なぜか?
馬に初めて触った程度の素人が、そんな謎に迫っても仕方がない。
そこで。前述した、
「なぜ人は他の動物につけられた傷を誇らしげに見せたり、
嫉妬するのだろうか?」
という私の説、というか疑問符を思い起こしてご覧なさい。
いや。ご覧なさいと言われても、
ろくに考えたことのないことを急に考えても、
いまの時点では何ら判然としないだろう。
しかし、これだけはぜひ断言したい。
今後。どこかで誰かと馬の話をしたとする。
その場合。
タイミングをみはからい、
鷹揚とした態度で私は次のように切り出すに違いない。
「ゴホン…。ところで、貴殿は馬に噛まれたことはありますか?」